2016年12月8日木曜日

ただ、忙しい(症例が多い)だけでダメ

研修病院を選ぶときに、

「忙しい病院(症例が多い病院)で、バリバリやりたいです!」

と答える学生さんがおられます。
確かに、以前も書きましたが症例数がある程度なければ、経験値も上がりませんし、希な疾患にも遭遇できないかもしれません。トレーニングするには、症例数はある程度必要です。ただ、病院を選択する際に見て欲しいのは以下の点です

・feedbackをしっかりとしてくれる上級医がいるか。(スタッフ+3年目以降の後期研修医)
・問題にぶち当たったときに、しっかりと研修医を守ってくれるスタッフがいるか。
・事務方のサポートもあるのか。

見学に行った学生さんから見れば、
初期研修1年目の医師や2年目の医師が患者さんをいろいろと診察し、方針決定までしているのはとてもかっこよく見えるものです。
ただし、その奥にスタッフからのfeedbackや過保護になりすぎない見守りがあるかどうかも
見て下さい。

質問①「ポリクリを回って進みたいと思っていた診療科が変わった」

「元々消化器内科志望であったが、入局後のことや仕事の裁量のきき具合から 
皮膚科に行った方が自分としては幸せな人生が送れるのではないかと考えるようにな 
った。一方で裁量が聞く分、元々憧れていた命を預かる責任感は薄くなるのではないか
ということに対して後悔しないだろうかという不安がある。shinya先生の実感として、あるいは周りの先生のキャリア選択を見て、率直な意見を聞かせて欲しい。」

blogを見て下さっている学生さんからこのような質問を頂きました。
ありがとうございます。
学生にはとても多い悩みだと思います。私自身も、入学当初は小児科希望でしたが、学生生活の間に家庭医、血液内科、心臓血管外科etcいろいろ悩みました。
 学生のうちはおおおかたそういうものだと思います。具体的なイメージや情報がないのですから、ポリクリで一部を触れてみてさらに変わるものだと思います。

私は以下のようにお答えいたしました。(あくまで、私見です。)


kさん:実習で皮膚科を回った際に、
 ・皮膚初見や病理から推理する診療が楽しそう
 ・人員が多い分医局で回す仕事に余裕があり雰囲気がいい
 ・3年目から研究が始められ
 ・フルタイムから離れていく女性医師が多いので男性医師としてはキャリアのチャンスを掴みやすい
 ・留学もできる
 ・仕事も裁量がきく
と「おいしい」話をたくさん聞いて魅力を感じるようになりました。
一方消化器内科医には憧れはあったのですが、
 ・仕事はしんどそう
 ・医局の医師が多く競争が激しい
 ・医局の雰囲気がとても悪い
 などハード面での悩みが出てきました。

:大学で将来仕事をすることを念頭に置いているという点では、皮膚科の先生がおっしゃるようにキャリアではチャンスがつかみやすいかもしれません。競争率という点でも。また、皮膚科も癌があるわけで、命に関わる仕事というもともとの志にも通ずるかもしれません。
 私からの視点での皮膚科と消化器内科の特徴を挙げてみようと思います。
消化器内科
 ・上部・下部消化管を中心としたカメラをする
 ・肝臓/胆道/膵臓といったERCPやエコーも使った腫瘍の治療・肝ウイルス治療を行う
 ・「内科」といわれる中でも、循環器同様に手技があるため外科的要素があり、緊急治療(上部消化管出血・胆管炎)も対応が出来る、腫瘍に対しても局所治療が出来る
 ・生活習慣に対して介入が出来る(アルコール性肝炎、脂肪肝、胃潰瘍、GERD)
 ・その他に遺伝的なもの、膠原病と絡む疾患がときどきあって、医学的興味がそそられる
 ・病棟業務が必然的に多くなることがある。緊急で呼ばれることがある
皮膚科
 ・アレルギー疾患が多い
 ・治療はほとんどステロイドが多い(病理的には区別がついても結局のところという点で・・・)
 ・腫瘍もある。
 ・全身疾患のとっかかりとなることがある(内科系の癌や膠原病など)
 ・大学で勤務をしない限り、希な疾患が集まることは少ない
 ・病棟業務は少ない。緊急での呼び出しは少ない
 ・一般病院(規模の小さい病院)で当直をすることになると外科系当直をする
 
ざっと挙げるとこんなところでしょうか。

「幸せな人生が送れるのではないか」

この基準を自分でどこにおくかだと思います。
何をすることで自分が「幸せだ!」と感じることが出来るかだと思います。 
ずっと働きづめがかっこいいとは思いませんし、土日に病院に行かない医師はダメな医者
とも思いません。やることをしっかりやって、目の患者さんに
「ありがとうございます」
といわれる医師。それだけでなくコメディカルや他の科の医師から
「ありがとう」といわれる医師が素敵な医師だと思います。


おそらく、ポリクリや数カ所の病院で消化器内科や皮膚科を見られただけではないでしょうか。雰囲気のいい悪いは、施設が変われば変わります。
 研修医になられて、いろいろな科を回ると思います。2年目のギリギリまで悩んでも私は悪くないと思います。
いろいろな科で真剣に取り組んでみて下さい。学生のときとは違う視点でそれぞれの科のことが見えてくると思います。そこで決めたらいいと思います。また、皮膚科に決める!
となったら尚のこと、2年間という短い期間でしっかりと内科の勉強をしてください。全身疾患との関連は切り離すことが出来ません。またcommon diseaseの内服薬の名前と特徴については必ず勉強して下さい。
薬剤性疾患も多いです。

 3年目以降もやっぱり違うと思えば、変わることは簡単です。嫌なことをやって人生過ごすよりは、しんどくても楽しいことに時間を費やすほうが幸せだと思います。

2016年5月4日水曜日

見学に行くときはどこを見ればいいでしょうか?③

5つめは、研修医が楽しそうにしていること
 これは、いつも言うのですが、ラクをしていて楽しそうというわけでなく、「このまえ○○の症例を経験したー。焦ったよー」とか「△△の手技をやらせてもらえたよ」といった、医師1年目・2年目として成長を楽しんでいるような環境、そして少しきつくてもそれに耐えられる以上の経験を積めていると実感しているような研修医の先生方がいる病院はとてもいい病院かもしれませんね。これが一番かも。

 6つめは事務方が研修医への対応に積極的であること
 いい意味で協力体制があるというのはとてもいいことです。

なんでもかんでもお願いしていたわけではありませんが、私もほとんど家に帰れなかったため、税金のこと・事務的なこと・自動車関係など、自分でやらなくてもいいことは事務の方がやってくれていました・・・今思うととても申し訳ないですが、そうでもしないと時間がなかったんですよね・・・ありがとうございました。

見学に行くときはどこを見ればいいのでしょうか?②

3つめは、総合内科や救急総合診療科が充実していること
 初期研修の2年間、多くの研修医の先生方はcommon diseaseを学ぶはずです。また、紹介で受診された患者さんを診る機会よりも、「頭が痛い」「熱がある」「お腹が痛い」といった症状を訴えて来られる患者さんに対して、問診、診察をして、鑑別疾患を挙げ、適した検査を行い、診断する。または診断できなくても、危険な病気は除外をして、次回followをすることで病気の自然経過を経験していくと思います。そのチャンスが多いのは、総合内科や救急総合診療科であり、上級医から偏りのないfeedbackをもらえると思います。
 病院(受診)への窓口が一つとなっているのは患者さんにとっても、研修医にとってもとてもいいことだと思います。

4つめは、専門科の見学はあまり意味がない?

 3つめにリンクすることですが、例えば自分が将来進みたい科が消化器内科だとして、見学に行く病院が消化器内科がとても有名で症例数も多いから、見学のときに見てみたい。実習をしてみたいというのは、あまり勧めません。学生のうちに一度見ておくというのはいいかもしれませんが、初期研修のときには、偏りのない知識を身につけるとてもいい期間です。3年目以降になれば、自分が選択した科については、嫌でもたくさんどっぷりと浸かってられます。ですので、それよりも年間を通じて救急総合診療の勉強が出来るとか、内科の研修時間が長いので内科の研修体制が専門に偏らず、多岐にわたって見ることが出来るか。また指導してくれる医師がいるか。そこを確認する方がいいと思います。2年間を通じて一番接点があるのは、おそらく一つ上の先輩と救急総合診療科(年間を通じて救急当直がある場合)や総合内科医師だと思います。

2016年4月2日土曜日

見学に行くときどこを見ればいいのでしょうか?①

これもよく聞く質問です。
巷で有名な病院をとりあえず見学に申し込んでみたけど、
どこをみればいいのかわからない。
そういう悩みもよく聞きます。

一つの指標は、1年目の医師と2年目の医師の「差」を感じることではないでしょうか。
1年間でそれだけ成長する可能性があるということではないでしょうか。
逆に、1年目の医師か2年目の医師かよくわからない場合は、1年目のときから優秀でその病院で研修したからパワーアップしたという感じではないように思います。

1年目も優秀なのに2年目はさらに明らかな差を感じる。これがいい病院だと思います。

2つめは、屋根瓦方式であること
 先に述べたことに関連するかもしれませんが、どの分野でも、人に教える機会が多いとさらに知識が確実なものになったり、さらに勉強するものです。1年目の医師と2年目の医師がともに同じ現場で働くチャンスがある研修病院はいいかもしれませんね。

2016年3月31日木曜日

大学病院と市中病院どちらがいいのか?

大学病院で研修をしていない自分の意見としてお聞きください。

皆さんは様々な医師になられると思います。

常に最新の治療を発見し、行う医師

病気の新しい治療を研究・開発する医師

commonな疾患も含めて、手技も行いながら治療に携わる医師

皮膚科・耳鼻科・眼科・形成外科・泌尿器科といった外科系手技を学ぶ必要があるが市中では症例が少ない科に進む医師


将来進みたい科が決まっていない人は、
市中病院での研修を勧めます。
世の中の疾病構造を知ることができます。いわゆる「風邪」や、「腸炎」「偏頭痛」といった、commonな疾患をしっかりと診断することができる(検査をしなくても除外することができる)頭の構造を作ることが初期研修では求められていますし、そうあるべきだと思います。
そうした中で、たくさんの症例を経験する中で、自分の興味が2年間でどこへ向かっていくのか考えてみてはどうでしょうか。また、世の中で自分が役に立ちそうな科はなんだろうと考えることもできるのではないでしょうか。専門領域の研修を大学で学びたいと思えば、3年目からでも十分だと感じます。半年早く、カテーテルの手技をやった、内視鏡をやった、それぞれの科で手術に入ったとしても、10年のスパンで見てそれほど大したことではないと思います。それよりも、なぜ、その手技が必要なのか。その侵襲的な検査を選択しないといけないのかを「考える力」を養うことの方が大切ではないでしょうか。一朝一夕ではないかもしれませんが、その「考える力」がベースにしっかりあることが大前提で手技を学ぶ必要があると思います。

将来進みたい科が決まっている人は、
なおのこと市中病院での研修を勧めます。
唯一、家庭医やクリニックベースで将来働く。そのために後期研修もクリニックベースの研修プログラムに進みたい!と思っている人は、大学病院での研修を勧めます。
なぜなら、いろいろな科をローテーションしてそれぞれの専門科の医師から直接学ぶことができるのは初期研修医のときぐらいしかないからです。
 例えば、泌尿器科に進みたいと思っている人は、3年目以降症例をたくさん積むためにはやはり大学への入局が必要になると思います。症例が集まるからです。そこで稀な疾患も含めて病気に対するアプローチや手術の勉強が必要になります。そして、専門医試験に通ったあと、市中でcommonなものも診つつ、手術を行う医師となるか、細分化された領域での研究を進めていく医師となるか自分での選択となると思います。そうすると、泌尿器科領域以外の疾患に対する勉強はいつ学ぶか?
 初期の2年しかないのです。風邪、しかり腸炎。これらは確かに自然に治ることが多いので特に治療介入は必要ないかもしれませんが、むやみやたらに抗生剤を出すような不必要な医療介入をしてしまう医師になってしまうかもしれません。虫垂炎や心筋梗塞、胃潰瘍といったcommonだけど手術や、治療介入が必要な疾患を鑑別に挙げれないかもしれません。自分が泌尿器科の担当患者さんが、みぞおちあたりが痛いといったときに、消化器科へ紹介するのか循環器科に紹介する必要があるのか(心筋梗塞や狭心症を考慮して)考えられるかどうかは2年間の経験しかありません。回り道には絶対ならないと思いますので、考えてみてください。


 家庭医や総合診療科といった科に進みたいと思っている人は、
先ほどとは逆の立場で大学で行われている最先端の治療や研究について知っておくと将来の自分の診療にとても役に立つと思います。自分が普段診ている患者さんが、とても稀な疾患であった。紹介した先ではどのような検査や治療をするのか、イメージがわくと思います。また、どのような流れで診療が進むのかを患者さんに説明できるというのはとても大きいと思います。

2016年3月27日日曜日

大きい病院がいいのか?

同期が10人前後いる方がいいかもしれませんね。

2学年で20人。

例えば、3人しか同期がいなかったとして、自分と性格が合わない2人だったら?
逆に1学年20人以上もいる大きな施設では指導医も大変で研修医全員を覚えられるか?行き届いて見てられるか?
 皆さんも「人」ですから、気の合う人、そうでない人、いて当然だと思います。

同期が10人程度いれば、1人か2人は必ずとても気があう同期に巡り会える可能性が高いと思います。そして、初期研修時代に巡り合う同期は一生の宝物です。戦友だと思います。
 私も10年経った今でも同期に会うと、初期研修時代にタイムスリップしたかのような気持ちになります。お互いの成長も確認しながら今でも刺激しあえる仲間です。

 希望している病院の研修医枠が3人ぐらいしかいないけど大丈夫かな?

という人もおられると思います。そういう時は、指導医を見学時によく観察してみてはどうでしょうか。同期となる人は選べませんが、指導医は選べます。見学したときにロールモデルになる指導医や、とても魅力的な指導医がいるのであればそれも選択するpointになるのではないでしょうか。

2016年3月25日金曜日

忙しい病院がいいでしょうか?

YES

とも言い切れませんが、症例をある程度経験できないと自分の力はつきにくいと思います。

「肺炎」を経験したといっても、診断や治療方針は、患者様一人一人異なるものです。症状も似ているようで全く一緒ということはないです。20人の肺炎患者さんを診れば、20通りの診断のkeypointがあったり、治療のターニングポイントがあったりするものです。
 忙しすぎて、患者さんのことが診れなくなるぐらいであれば、しっかりと一人一人の患者さんを診る研修をするほうがいいですが、教科書で勉強しても実際に患者さんを診ないと力は付きにくいと思います。また、上の先生の指示だけを仰いでいても力は付きにくいと思います。
 
 しっかりアセスメントまでした上で自分の考えを指導医にぶつけられる環境があることがいいのではと思います。

 

2016年3月21日月曜日

初期研修病院はどんなところにすればいいでしょうか。

皆さんが、医師として働き始める最初のとても大切な2年間です。
やっぱり、色々と悩みますよね。

有名病院?
出身大学の付属病院?
出身地の大学付属病院?

大きい病院?
小さい病院?

救急を頑張っている病院?
各専門科が揃っている病院?

色々選択する上で基準はあると思います。

しかし、選択する上で

①病院側のpoint
②自分のpoint

これらをはっきりさせておかないと選択するにも難しいですよね。
 家族がいたり、結婚予定の人がいればなかなか全国の病院から探すことは難しいと思います。
 どうしても体力的に自信がない人はいくら有名病院でも厳しい環境では充実して研修を送ることが出来ないかもしれません。

個々の特性があるので、質問を受けるときはそれぞれの背景や性格を考慮してアドバイスしていますが、共通して言えることは、以下のことです。

 医学生が忘れがちなのは、マッチングは本当に就職活動と同じで、
自分の性格・特徴をしっかりと、見つめ直すことがとても大切だ。

ということです。

 自分がわかっている人、自分が将来どのような医師になっていたいのか目標がある人

こういう人は、人生を逆算していけば自ずと自分の道は開けると思います。
その中で自分に適した初期研修病院がどこか絞れていくのではないでしょうか。